少年の頃のトラウマという重い題材を扱った繊細で美しいBL

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アナトミアとは解体新書の事です。
旧版の表紙では体が透けて骨が見えている、なかなか恋愛ものにしてはショッキングなイラストだったのですが、新装版のイラストでは美しい繊細なイラストになっています。私的には旧盤の方が内容としてはあってると思いますが、精神的なトラウマを主題にした、繊細な美しい物語でしたので、より幅広く読んでもらうためには新装版の表紙の方が良いかもしれないですね…。
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この漫画、恋愛物語やBLと呼ぶには少し重く、幼い頃に受けた虐待のトラウマの克服を題材にしており、BLというよりどちらかというとJUNE的な作品だと思います。
愛を知り、過去を振り返り、縛られてた価値観を覆すという意味では萩尾望都の「ローマへの道」に通じるものがあり、人の心理的な軌跡を描くドラマが好きな方には凄くお勧めです。同性同士ではあるけれど、決してそれが主題ではないのです。

2016y02m27d_232354476絵はもしかしたら好き嫌いがあるかもしれません。
私も線の細い作風はファンタジーっぽくて苦手かもしれないと思いましたが、読んでみると繊細で美しい絵と物語に惹き込まれてしまいました。



ここからは主観の感想を交えたあらすじになります。ネタバレ注意!





繊細でエキセントリックな美術教師を慕う大人びた生徒の愛

少年期に受けた虐待がもとで、人と情愛を結びたいと思っても 知らず知らずのうちに自分で関係を壊してしまう、奔放でエキセントリックな年上の絵の教師、エバを愛してしまったルーサー。
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ルーサーは子供の頃、学者である両親に連れられて欧州を転々として、17歳にしては少し大人びた少年で、彼には美しい思い出がありました。
幼い頃、廃屋の窓に浮かび上がる埃のような長い金髪の髪を持つ少年に恋した事。
ひとこと言葉を交わしただけの思い出です。

対するエバには人に話せない過去がありました。

カリスマ性を持った大人への傾倒が少年を歪めてしまう

彼は少年の頃、圧倒的なカリスマ性を持つ大人、エンリケに出会い 傾倒していきます。しかし次第に狂気を宿すようになったエンリケに、性的虐待を受けてしまうのです。
エンリケは言います
「エバ、僕は間違っていた。君にした僕の行為は罪だった、悪だった。これ以上それをできない」
「なぜ?エンリケ、これは芸術を体得する行為なのでしょう?あなたは崇高な芸術で僕を高めてくれるのでしょう?」

その後、エバは性的虐待を見とがめた教師とともにエンリケの部屋を訪ねた際、焼身自殺を図り、窓から身を投げたエンリケを目撃してしまいます。

ここは全くの私の勝手な感想ですが
エンリケは昔の恋人を取り戻すために偉大な絵を描きたいと願っていました。
しかし、エバは純粋に芸術を追い求めていました。
純粋で無垢な心のままに彼を愛していたのです。
それが分かったとき、無垢なエバを穢した自分をエンリケは恥じたのではないでしょうか。

これが現在のエバを形作っているトラウマになります。

虐待される少年への密やかな思慕

一方、ルーサーは幼いころエバに出会っています。
出会っていると言っても、高い窓辺にいる彼を遠くから見ているだけです。
ルーサーは思います。
「彼は額の花、何かの幻想。
もしかしたら虐待されているのかな?幽閉されているのかな?
僕はいつか助けに行く。王子様になって。」

幼いルーサーにとって この時までのエバは現実ではありませんでした。
童話の中の一コマにすぎません。

しかし
「死者の館」という博物館で内臓を露出させた天使のような美しさを持つ少女の蝋人形を見たとき、突然 窓辺にいるエバが生をまとって彼の中に存在を増すのです

彼は死者じゃない。もしいつか彼に会ったら、彼の断片を落とすまい・・。

幼いルーサーはそう、決心をします。

多分10年後・・・再び彼と出会ったルーサーは彼がエバだと確信しています。
そして エバに問題があることを承知しながらも、昔は触れることも叶わなかった彼に触れられることを奇跡のようなもの…と 彼を理解し、彼の恐れに身を寄せようと再び決心します。

エバにとって愛は人を暴き裂くもの

ルーサーは 何故自分を愛せないのかとエバに問います。
エバは答えます。

「何故って 人を愛するのは怖いからな。愛は人を暴き裂くものだから。俺はお前を裂くのは怖い。お前は壊れそうだ。」
「俺が自分を抱かせるのは(食わせるのは)何かを得たいからだ。たぶん・・・」
「先に自分を食わせる。そして食わせてくれるのを待つが大抵相手は食い逃げだ。そうでもなきゃ死んでみせたりする。フェアじゃない。」「食い合っても死なない相手をずっとずっと探していた」

そしてルーサーとエバは抱き合います。
しかしそれはエバが肉体的に依存するだけで彼の歪んだ心や孤独を救う事にはなりません。
ルーサーはエバの内面に踏み込む決意をし、彼の故郷へ一人向かいます。

ルーサーはエンリケの性的虐待を見とがめた教師からエバの過去を聞き出します。
「多少グロテスクな作風、そして雑な道徳観念、いいかげんな性癖・・・虐待的なことをしていたんだろうってことは疑う余地がなかったよ。」
「事件後エバは”多くを得ていた”と言って彼の死を悲しんで泣くんだ」
エンリケはエバに”絵を教える”と言ってその身体を切り刻んだのにエバは得るものがあったと固執して負を認められない

ルーサーは思います。
「エンリケは千度は死んだっていい。生き返らせて俺が殺したい」

この後ルーサーはエバに自分が勝手にエバの故郷に行って秘密を暴いた事を告白します。

エバはエンリケが自殺してしまったので 自分に彼がどういう意味で何をしたのかを聞くことができません。得るものがあったと自分に言い聞かせながら、執着を断ち切る事が出来ないのです。

人ひとりの人生を変えてしまう幼い頃の精神的外傷

13歳の綺麗で純粋な子供が ハンサムで強烈な個性を持つ大人と出会い、半ば洗脳されるように彼に惹き込まれた・・・それは今まで生きてきた自分を作り替えられるような出来事だったに違いありません。
いくら周りの大人が虐待だと言っても、愛していたなら猶更素直に聞き入れ、憎むことも遮断することもできなかったのだと思います。

エバはルーサーに殺してくれと望みます。
ルーサーは答えます。
「俺は君を切ることは出来ない。君を愛してるんだから。でも、君が望むなら同時にそれをやろう」
エバは言います。
「出来るわけないじゃないか!お前なんかまだ子供だろう!そんな綺麗な・・・そんな無垢なものを何故・・何故俺が・・・できるわけが・・」
ルーサーは思います。
「エバだって子供だった。とても綺麗で無垢だった。あの悪魔はなぜそんなことが出来たんだろう。」

エバの時間は子供の頃にエンリケによって奪われ、自殺された事により止まってしまったのです。

エバは言います。
「両手以外のものは全部奴にとられてしまっていて、奴と一緒にフィレンツェであの日燃えてしまったんだろう。今ここにいる自分は自分の亡霊のような気がする。」

ルーサーはエンリケの描いたエバの身体の習作を彼の遺品として預かってきていました。
そのことをエバに告げるとエバは長い間、エンリケの遺品の前に佇み一人、見ていました。

そして言います。

「・・・・今見れば、エンリケの絵なんか大した絵じゃない。子供一人の身体すべてを投げ出させるような価値はないな。・・・・うん、価値はない・・・価値はないが・・・重い・・・重いな・・・”赤”はこれからも俺に付き纏うことになるだろうさ・・・・」 

そしてルーサーとエバは遺品を浜で一緒に燃やすのです。
これによりやっとエバの中でエンリケとの出来事を冷静に見つめることが出来るようになったのではないかと思います。

多分、エバにとって過去の出来事が完全にすべて癒されることはないでしょう。
しかし、子供のころのエバが見たエンリケの絵と大人になって見たエンリケの絵はきっと違っていたのではないかと思います。素直に大した絵じゃないかった・・・と思えたのでしょうし、自分がエンリケを美化していると思ったかもしれません。子供の頃に見たり考えたりしたことが大人になると違って見えることは多々あります。
そして当時、エンリケが自分を描いた絵を燃やすことで少しは過去のエンリケに対する自分の気持ちを整理し、呪縛を断ち切ることが出来たのかもしれません。
 
また、純粋なルーサーの想いは10歳も違うエバより大きな包容力を持ち、エバは彼に愛されて幸せだったと思います。彼がいなければ自分を見つめなおすことも出来なかったでしょう。
エンリケの呪縛を全て解き放つことは難しいと思うけど、ルーサーと一緒に傷を共有し、分かり合うことで乗り越えていけるのではないかと思えました。

小説を一冊読んだような読後感。

話だけを追うと重苦しく、息が苦しくなるほどです。
題材が子供への性的虐待だから当然と言えば当然です。

しかし、陰鬱とまでいかなかったのは優しく光を感じさせる絵柄のせいかもしれません。
更に、ルーサーが前向きでエバを全面的に支えていく覚悟が見え、彼の眼を通して見たからなのかも。なかなかこれほどの話を漫画1巻で描き切るのは難しいと思います。藤たまきさんのお話を作り上げる力は相当なものだと思いました。
秀逸な小説を一冊読み終えたほどの読後感です。
素晴らしい作品を本当にありがとうと言いたいです。

文章力が無く、ストーリーをつらつらと書き綴ってしまったような感想になって申し訳なく思います。藤たまきさんの作品の中でもアナトミア圧巻の出来だと思いますし、救いも盛り込まれていますので、BLに興味の無い方にも読んでもらいたい物語です。
他にも藤たまきさんの作品は好きなのですが、どれも重いかも…。
特に涙が止まらず、後を引いたのは「ホライズン」
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勇気のある方は是非読んで欲しい(´;ω;`)
しかしホライズンは悲しすぎる作品なのでBLはハッピーエンドが基本!という方は気をつけて…。
もし気落ちしたらミスターシーナの精霊日記4巻に後日談が。ちょっとだけ救われる…かも。


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